びぶ郎でタイムグラファー

最近、ついつい手を出してしまったのが機械式時計です。以前は正確無比なクォーツが好きで、防水性のが高いオメガのクォーツ版シーマスターを10年以上愛用してきたのですが、ちょっとしたきっかけで機械式時計の世界に入り込んでしまいました。まず入手したのがノモス(NOMOS)のオリオンです。この時計はドイツのグラスヒュッテで製造されている機械式時計で、シンプルで無駄のないデザインが魅力です。時計を駆動するムーブメントはETA社から提供されたものをノモスが独自に改良したNOMOS αになります。このムーブメントは毎時21,600振動で。最近のなかではロービートと呼ばれる振動数の低いものに分類されます。一般に高振動数のもののほうが精度が高いといわれていますが、NOMOSαの精度はすばらしく、日差+3秒程度で安定しています。

  

1日あたり何秒進むのか(あるいは遅れるのか)という日差は実際に24時間掛けて測定することができます。安価に購入できる正確なクオーツ電波時計の置時計と比較すれば正確に測定できます。一方で、時計の買取や整備を行っているプロの方はそのような悠長なことはできないので、特別な装置を利用します。それがタイムグラファーです。タイムグラファーは時計に耳を当てると聞こえる「カチカチ」音を検知して時計の動作状態を短時間で診断することができる機械です。

タイムグラファーは魅力的な機械なのですが、プロ用のものであるがゆえにかなり高価になっています。最近は中国ブランドの安価なものは2万円程度で流通しているようですが、事実上無保証のようなものも多く、なかなか購入には踏みけれません。そこでお世話になるのが、wolfmanさんが開発した「びぶ郎」です。これはWindowsで動作し、マイク端子から入力された時計の動作音を入力としてタイムグラファー機能をPC上で実現するものです。

唯一のハードルは時計の動作音を読み取るピックアップとアンプを調達する必要があることです。様々な方法が紹介されていますが、メジャーなのは100均で購入した防犯ブザーや週音気から部品を取って作成するタイプです。この方法では「半田ごて」を使用する必要があります。理工学部電気工学か出身の私は当然「半田ごて」は持って おり電子工作も嫌いではないのですが、できれば時計の世界と「半田ごて」の世界は別にしておきたく、「半田ごて」を使用しない方法を考えることにしました。

採用したのは楽器用品の活用です。我が家にはエレキギター用のエフェクターG1Nがあります。これのアンプ機能を活用することにします。ついでピックアップですが、クラッシックギターにも使用できるピエゾタイプのものを購入します。だいたい2000円ぐらいで購入可能です。つまり、我が家の場合の追加費用は2000円ということになります。

エレキギター用のエフェクターG1N ピエゾタイプのピックアップ

 楽天でG1Nを検索     楽天でピエゾピックアップA1-OSJを検索

 

組み立てを開始する前に確認しなくてはならないことがあります。それはピックアップに磁石が含まれていないか確認することです。ピックアップにはピエゾ方式とは別にマグネットタイプのものがあり、それには強力な永久磁石が内蔵されています。機械式時計に永久磁石を近づけると帯磁してしまいます。確認方法は簡単で、方位磁石を近づけて針が反応しなければOKとなります。私が購入したA1-OSJは問題ありませんでした。

早速、接続してみます。接続は以下の通りです。

ピックアップ(A1-OSJ)---エフェクター(G1N)---PCのマイク端子

ノイズ軽減のため、ケーブルはシールドタイプが良いでしょう。ピックアップとエフェクターの間はエレキギターで使用しているものがそのまま使えます。最後に台座として購入したゴム片(500円)にガーゼをのせ、その上に時計をのせます。そして新たに購入したピックアップを重ねて輪ゴムで固定します。床からのノイズを軽減するためにタオルの上にのせておいたほうが良いでしょう。

ゴム片にガーゼをのせるのは必須です。これは時計を安定させるほかに重要な役割があります。ゴムには可塑剤という成分が含まれており、これはプラスチック等を侵食します。安価な時計やアンティークの高級時計は風防(針を保護する透明な部分)がプラスチックでできています。その部分とゴムを直接触れさせるのは良くありません。一時間以内ぐらいであれば特に問題は無いとは思いますが、ダメージは避けたいところです。

実際の接続した状態は以下になります。

    

最終調整としてチューニングを行います。本来、エフェクターは音にひずみを出したり、残響を出したりする道具なのですがそれらの機能は全て無効化します。エフェクターが有利な点はエフェクターでボリュームの調整がダイヤルで簡単にできることのほか、イコライザーの機能で簡単に音の調整ができることです。いろいろと試した結果、低音域を下げたほうがクリアに時計の動作音を補足できることがわかりました。

以下、測定結果です。

ノモス ORION (NOMOS α) 振動数21,600

私にとって初の機械式時計です。

実際に録音したNOMOSαのロービートの音 (振動数21,600)はこちら

びぶ郎でも以下のように正常に測定できました。特に問題のない測定結果です。

・IWC PORTFINO  ノンデイト(cal-37521) 振動数28,800

続いて別の時計。中古で購入したものでIWCでムーブメントはcal-37521。振動数は28,800になります。

中古で購入した時計はタイムグラファーで測定することをお勧めします。多くの場合、偽物のムーブメントには比較的安価な振動数が21,600(6BPS)のものが使用されています。なれた人なら耳で聞くだけで、判断ができるのですが私のような素人であれば測定するのが確実です。

実際に測定したIWC PORTFINO (cal-37521)のビート音(振動数28,800)はこちら

びぶ郎でも以下のように正常に測定できました。 測定結果は28,800振動(8BPS)を示しており、明らかな偽物ではないことがわかります。もちろん、一部の「高級な偽物」には28,800振動のムーブメントが搭載されているので絶対的な真贋判定にはなりません。

なお、右下がりの傾向線は時計の「遅れ」を表しています。日差でおよそ+20秒。これはそろそろオーバーホールに出したほうが良いことを示しています。


 

・IWC Portuguese 7 Days(cal-51011) 振動数21,600

IWCの自社ムーブメントを採用した時計。ムーブメントはcal-51011。振動数は21,600になります。
シースルーバックだと音がきれいに拾えます。

実際に測定したIWC Portuguese 7 Days(cal-51011)のビート音(振動数21,600)はこちら

びぶ郎でも以下のように正常に測定できました。
結果は若干の右上がり、進み傾向が出ています。購入から間もない状態なので順当なところでしょう。


 

ロレックス ROLEX DATE JUST(cal-1570)   振動数19,800 1960年代のもの <<< 左記全て推測です。

知人から譲り受けたアンティークロレックスです。真贋も含めて詳細は不明ですが、ロレックスに詳しい方にお尋ねしたところ、重さ、竜頭の巻き味、針の動きからおそらく本物であろうとのことでした。

びぶ郎で測定しようとしたのですが、なかなか測定ができませんでした。耳で聞いても音が小さく、ピックアップで音が拾える箇所が極めて限られており、試行錯誤の上にようやく測定できました。どうにか測定できた測定ポイントが下記になります。エフェクタのイコライザーでの音域調整も併せて行いました。

 実際に測定したROLEX DATE JUST(cal-1570) のビート音(振動数19,800)はこちら

測定結果が以下になります。結果として振動数19,800(5.5BPS)と思われる結果が出ました。これは真贋判定としては良い結果です。 これは製造されたと思われる年代(1960年代)にも整合しますし、5.5BPSの偽物というのは聞いたことがありません。無いとは言い切れませんが。。。
いずれにしても精度としてはひどい状態で、早急にオーバーホールをお願いしようと思います。そこで真贋も決着するでしょう。

世界のBiburoファンのための英語版の説明はこちら。
Here is the basic instruction of Biburo in English.

サイトのトップへ戻る