Kindle Keyboardを分析する


私の手元にはKindle Keyboard free 3Gモデルが2台あります。
一号機:シリアル番号がB00Aで始まる国際モデル(ヨーロッパモデル) ACアダプター付属 (3GキャリアはVodafone)


二号機:シリアル番号がB006で始まるアメリカモデル(広告付き)     ACアダプター付属  (3GキャリアはAT&T)
 

一号機は知人から譲って頂いたものになります。その方は米国のamazon.comで購入されたとのことですが、ある時期から(もしかしたら当初から)海外への発送分については国際モデル(ヨーロッパモデル)の購入に誘導されるようになっているようなので、そのルートでの購入かと思われます。
また、ある時期から(もしかしたら当初から)海外発送分についてはACアダプターが付属しなくなったようですが、これはそれよりも前に購入されたものと思われます。ACアダプターが付属しないことについては明確な原因は分かりませんが、日本のおけるPSE認定取得義務などが影響しているのかもしれません。

二号機は私自身が購入したものですが、普通の方法では日本から購入することはできません。アメリカのamazon.comはこのアメリカモデルについてはアメリカ国内に対してしか発送しません。そこで利用するのが転送サービスです。転送サービスを利用すればアメリカの住所が取得でき、配送先住所をそちらに設定したうえで、そこから日本に転送してもらいます。amazon.comは米国内は無料配送してくれるケースが多いので、転送サービスを利用して日本に送付してもさほどの送料は発生しません。

転送サービスについてご関心がある方はメールを頂ければ、私が利用している転送サービスをご紹介いたします。
admin@tateurinavi.comまでメールをお願いいたします。
件名に「転送サービスについて」と書いてもらえると見落としがないかと思います。

さて、これらの2台のKindle Keyboardは素晴らしいことに世界中で3G通信を無料で利用することができます。これは機器代や書籍代から通信料を回収するモデルにより実現されています。この3G通信は書籍の購入に利用するだけではなく、付属のブラウザを利用してWebサイトを閲覧することが可能です。 もちろん、白黒のe-inkディスプレーですから、美しい写真や動画を見るには不適ですが、ニュースの参照やメールの送受信には十分な環境が得られます。日本語の表示も良好で問題ありません。

  

また、matsuuさんが提供されているサービス(https://matsuu.net/kindle/)を利用すると日本語入力による検索やGmailの利用も可能です。

新しい機種からはこの機能は削除され、3Gを利用したWebサイト閲覧はできなくなってしまいました。また、Kindle Keyboardについても残念ながら2012年7月より、月間50MBまでしか利用できなくなってしまいましたが、それでも十分に利用価値のある機能になっています。
確認のために容量の大きいページにアクセスを頻繁に行い、50MB制限に達してみました。下記の画像がその時に表示されたものになります。
要約すると、「3Gは無料で提供しているので、月間50MBまでしか利用できません。あなたはその制限に達しました。今月これ以上使用する場合はWiFiを利用してください。Wikipediaとamazonについては3Gで利用し続けることが可能です。」となります。

なお、下記のように50MBに達した時点でいきなり使用できなくなるのではなく、24時間の猶予期間ののちに次月の初日まで使用できなくなる仕様となっています。 これは非常に良心的な仕様と言えるでしょう。

私の通常の利用スタイルであれば制限内で一ヶ月持つのではないかと思います。ちなみに、個人の携帯契約に基づく国際ローミングで50MB分のパケット通信をした場合、通信料は数万円 を超えることになると思われるので、海外に行く機会がある人にとってはKindle Keyboardは非常にお得な道具になるものと思います。

あえて同じ機種を2台所有している理由は国際モデルとアメリカモデルではアマゾンが契約している通信キャリアが異なっており、利用できるエリアが異なるからです。アマゾンンのサイトで利用できるエリアは調べることができます。結果は以下の通りで微妙に異なっていることが分かります。ベトナムに行くのであれば国際モデルを、オーストラリアに行くのであればアメリカモデルを持参したほうが良いことが分かります。(2013年2月現在)

国際モデルのカバレージエリア
通信キャリアはVodafone
出所:http://client0.cellmaps.com/viewer.html?cov=2&view=intl

イギリスのアマゾンからリンクが張られています)
アメリカモデルのカバレージエリア
通信キャリアはAT&T
出所:http://client0.cellmaps.com/viewer.html?cov=1

アメリカのアマゾンからリンクが張られています)

私は旅行先によって使い分けています。なお、両者とも日本での利用についてはドコモおよびソフトバンクのエリアで利用できるようになっているため、差異はありません。

また、日本国内の都市部以外で私が利用しているWiMaxが使用できない場合、無料の3G通信は重宝するのですが、車で移動する場合は2台とも持って行って50MB制限に該当してしまった際のバックアップとしています。

なお、Kindleについては新しい機種が発売され、Kindle Keyboard国際モデルについては完売で、アメリカモデルのみ在庫が残っているだけのようです(2013年2月現在)。海外でのネット接続が必要な方にはKindle Keyboardはお勧めの端末です。

このアメリカモデル端末では日本のamazon.co.jpで販売している書籍を読むことはできませんのでご注意ください。全世界で無料で利用できる 日本語対応3Gブラウジングと洋書を読むには最高の端末といえます。ブラウザやPDFについては日本語の表示が可能です。

・Kindle Keyboardの面白い使用方法

Kindle Keyboardには面白い使用方法があります。それは普通の方法では日本から見ることが難しいウェブサイトを参照することです。最近、ファッション系を中心に利用者の国を自動判別してそれに応じたウェブサイトを表示する企業が多くなってきました。具体的な例をあげると
UGG: www.uggaustralia.comを参照しても、日本からのアクセスであれば日本向けサイトwww.uggaustralia.jpに強制転送
Calvin Klein: www.calvinklein.comは参照できるが、日本からのアクセスであればshopのリンクが動作しない
Abercrombie & Fitch: www.abercrombie.comを参照しても、日本からのアクセスであれば日本向けサイトja-jp.abercrombie.com強制転送
等になります。

上記のようになっているのは何故でしょうか?一つは利用者に合わせた言語や利用者の国における商品展開に合わせてサイトを表示した方が利用者にとって利便性が高いということもあるかと思います。しかし、もしそのような理由だけであれば利用者の国のサイトの案内をポップアップ表示して、選択できるようにできる方式が良いと思います。実際、アメリカのBrooks BrothersやAmazonはそのような方式を採用しています。

実はファッションブランドには他国のサイトを見せたくない積極的な理由がある場合があります。それは国別のマーケティング戦略の差異による価格差です。ファッション関係の商品は価格に占めるマーケティング費用の割合が高く、また各ブランドの位置づけも各国における競合の状態などにより大きな差があるので、国間の価格差は大きくなります。上に記載したアメリカ向けサイトの参照ができないようにしている3ブランドの場合、日米の価格差が2倍程度あることは珍しくありません。ブランドとしてはそれを日本の消費者に見せたくないのです。また、アメリカ向けのサイトが参照できない状態なので、もちろんアメリカ の直営ネットショップで個人輸入することもできません。

では、利用者の国別に表示内容を変えているサイトはどのように利用者の国を判定しているのでしょうか?多くの場合、それは利用者のIPアドレスを利用しています。IPアドレスから割り当てられている国を調べることができるため、利用者のIPアドレスを取得して利用者の国を判定しているのです。

このような状況下においてアメリカ向けのサイトを参照するにはproxy(代理サーバ)という仕組みを使用します。アメリカにあるproxyを利用することにより、アメリカからアクセスしているように見せ ることができ、アメリカ向けの内容が参照できるようになります。

しかし、この方法も簡単ではありません。自由に使えるproxyはすぐに閉鎖されることも多く、また速度も非常に遅くなります。さらに個人輸入をしようとして注文情報を入力するとなると氏名、住所のほかクレジットカード番号も送信する必要があり、経由しているproxyから情報が流出する可能性は否定できません。(SSL対応のサイトであれば簡単には流出しませんが、リスクは残ります。)

そこで便利なのがKindle Keyboardになります。Kindle Keyboard(3G接続)の場合、インターネットへの出口はアメリカにあるのでサイト側からみるとアメリカのIPアドレスが見えることになり、アメリカからアクセスしている様に見えるのです。これは、日本からアメリカの間はインターネットではなく携帯電話網である3G回線で伝送されるためです。この場合においても通信経路にはamazonが設置しているproxyは存在しますが、情報流出のリスクは極めて小さくなります。

Kindle Keyboardがあれば普通の方法では参照できないアメリカのサイトを参照することができるのです。この場合は国際モデルではなく、アメリカモデルをお勧めします。理由は、国際モデルについて接続サイトによって「アイルランドから接続」と判定されることがあったためです。

国際モデルを利用した場合のアクセスでは以下になりました。

UGG: 「アイルランドからのアクセスですか」とのポップアップ
Abercrombie & Fitch: EU向けのサイトに強制転送
Yahoo.co.jp: 米国からのログインがありましたとのメール受診(セキュリティ警告メール)

つまり、UGG, Abercrombieはアイルランドからのアクセスと判定しYahoo.co.jpはアメリカからのアクセスと判定したということになります。これは不思議な状態なので、原因を調べてみます。

まず、アクセス先のサーバー(サイト)に見えているIPアドレスを確認します。それはproxy判定サービスを提供しているサイトにアクセスすることで簡単に確認することができます。確認したところそのアドレスは米国に割り当てられていました。Yahooの判定ロジックはこれを利用していると思われます。次にアイルランドと判定される要素を探ります。可能性があるのは以下の二点になります。

1. アクセス元IPアドレスに対応するドメイン情報
2. アクセス元IPとアクセスサイト間の経路情報

まず1について調べます。アクセス元のIPアドレスからDNSの逆引きを行ってみました。そこから得られたドメイン名に関して登録されている情報を参照しましたが、アイルランドと関係のある情報は見つけられませんでした。

次に2について調べます。アクセス元IPアドレスへの経路情報を調べてみたところ、アクセス元IPの直近の経路上にアイルランドに割り当てられたIPアドレスがあることが分かりました。正確には分かりませんがこの情報をもって「アイルランドからのアクセス」と判定しているのかもしれません。いずれにしてもUGGやAbercrombie & Fitchのサイトではより高度な利用者国の判定ロジックを利用しているものと思われます。

次にアメリカモデルの端末で検証を行ってみました。その結果、全てのサイトで「アメリカからのアクセス」と判定されました。アメリカのサイトからの個人輸入にはアメリカモデルの端末が便利といます。なお、国別のアクセス制限を行っているようなサイトでは、購入をしたとしても日本への発送はしてくれません。その場合は、アメリカの転送サービス事業者に発送してもらい、そこから日本に転送します。広大な国土を持ち、通販が発達した米国では国内発送は無料か低価格に設定されているので、転送を挟んでも費用の増加は さほど大きくありません。

以下に各ブランドの日本からのアクセス制限と回避方法を纏めます。

Brooks Brothers: アメリカサイトで参照購入可能、日本へ発送が可能 > 回避策不要
Ralph Lauren: アメリカサイトで参照購入可能、日本へ発送が不可 > ネットワーク回避不要、転送サービスで日本に転送
Calvin Klein: アメリカサイトで参照購入不可、日本への発送不可 > ProxyかKindle Keyboardを利用。転送サービスで日本に転送
Abercrombie & Fitch: アメリカサイトで参照購入不可、日本への発送可(セール品は不可) > ProxyかKindle keyboardを利用。転送サービスは使えないことが多い。
上記に掲げた中で最も国別マーケティングを徹底しているのはAbercrombie & Fitchです。銀座に直営店を持ち日本ではアバクロの名称でいわゆるファストファッションよりも上位に位置づけられていますが、アメリカではGAP等と近しいところに位置付けられており、日米の価格差は約2倍程度になっています。であるがゆえに、日本の消費者にアメリカの価格を参照させず、アメリカから個人輸入できないような施策を 強力に推進しています。中でも米国内の送付先住所が転送サービスのものでないか確認し、転送サービスであった場合は購入を強制キャンセルするオペレーションは他のブランドでは見たことがありません。実際、消費者が指定した住所と、リスト化されている転送サービスの住所の同一性を判断するのはコンピュータで自動処理するのが難しいことも多いため、かなりの労力をかけて行っているものと思います。

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