ベストエオフォート型商品を考える

ここでは少し趣向を変えて、「Movie Cowboyで再生三昧」で紹介したMovie Cowboyに関係したビジネストピックについて書いてみます。

最近「ベストエフォート」という言葉を多く聞くようになりました。最もよく使われるのは通信の世界で、私が利用しているNTTのBフレッツは最大通信速度100Mbpsのベストエフォート型サービスとなっています。現在、「ベストエフォート」という言葉は「サービス」という言葉と組合わせて使われています。通信速度のように設備を共用している利用者の通信状況などによって連続に変化しうるものについては、何処までを保証するとは定義できないため「ベストエフォート」となるわけです。Bフレッツの例で言えば90Mbpsで通信できるときもあれば、10Mbpsとなるときももありますよ、ということになります。

私は最近「ベストエフォート型サービス」とは少しコンセプトが異なる「ベストエフォート型商品」というものが現れ、市場に受け入れられてきていると感じています。両者の関係は以下のように定義されます。

今まであれば「ベストエフォート型」商品は市場に受けいれられませんでした。つまり「金を出して買ったからには完璧な商品である必要がある。」との認識が顧客の中に確立していたからです。しかし以下の動向により、新たな動きが現れてきています。

上記の状況に対応して登場してきているのが「ベストエオフォート型」商品です。「金を出したからには完璧な商品である必要がある。」と考えていた顧客に、一部の商品提供者が「完璧な商品であることは 保証できないが、他社の製品よりも半分の価格で、他社よりも6ヶ月早く発売しますよ。不具合が見つかったらがんばって対応してソフトウェアを更新したいと思います。改修できるかどうかは 保証できませんが・・・」と、提案し始めたのです。

DC-MC35UL2(MovieCowboy)はまさに「ベストエオフォート型」商品だと思います。製造元も認めているように、発売当初は多くの不具合を抱えていました。一部の不具合は今でも解消されておらず、特に「再生したファイルのタイムスタンプを更新してしまう。」という不具合は強烈ですが、2007年4月現在改修されていません。製造元の人物が書いているブログには「不具合は認識しているのですが、改修方法が分からなくて・・・」と の趣旨が書かれています。では、顧客は怒っているのかというと、顧客は「この商品はもともと そういうもんだから・・そのうち、改修方法が見つかってソフトウェアの更新で直るでしょ」と、製造者の姿勢を許容しているのです。

私も上記の不具合を認識した上で購入しましたし、kakaku.comの口コミランキングにおいて、長期にわたって1位をキープしている事実はユーザの多くが製造元を支持していることを表していると思われます。顧客は「許す」のみではなく、「利益を享受する」ことがあります。先日、製造元は「インターネットラジオの機能を新規に追加する予定です。」とWeb上でアナウンスしました。従来の考え方では、製品に搭載されたソフトウェアを更新する機能は、「不具合を改修するため の製造者側のコストを抑えるための機能」であると位置づけられていました。しかし、このケースでは製造者は「今までなかった新たな機能を付加する予定である。」と発表したわけです。この姿勢はまさに「ベストエフォート型商品」の特徴といえるでしょう。

従来の考えでは、すでに顧客が対価を支払って購入した製品に無料で機能を付加する行為は経済的な合理性がありませんでした。機能を付加しても対価を得ることができないばかりか、提供する以上、追加機能に不具合があった場合は改修することを保証する必要があったからです。

しかし、「ベストエフォート型商品」の世界では状況が異なります。顧客は製造者の性格や心意気、つまり人柄ならぬ社柄を重視して商品を購入します。 従って、無料で追加機能を提供することは、顧客に社柄をアピールする絶好の機会であり、顧客の次の購買活動に大きな影響を与えます。かつ、追加機能に不具合があっても、「改修するために努力する。」ことはするものの、改修を保証する必要はないのです。

いまのところ、メジャーブランドは「ベストエフォート型商品」を展開してはいません。たとえば、LAN上のHDDに録画することができる東芝のデジタルテレビREGZAは多くの顧客の「レジューム機能 をつけて欲しい。」との声を認識しているものの、ソフトウェア更新のみで実施できそうなレジューム機能の追加を実施していません。これはある意味、当然のことで、今の東芝は、「一応、追加してみます。動作保証はしかねますし、不具合があっても改修は保証できません。」との立場はとることができないからです。

私は近い将来、「ベストエフォート型商品」のコンセプトがメジャーブランドにも広がっていくと考えています。もちろん、生命にかかわるような製品は「ベストエフォート型商品」では困りますし、非「ベストエフォート型商品」との住み分けをブランディングも含めて、どのように実現していくかという課題はあります。しかし、ソフトウェアがますます重要な位置をしめていく世界の中で、「ベストエフォート型商品」のコンセプトは、消費者の支持を得て、加速していくものと考えます 。

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